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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

三

だがまたたく間に近づいてきたのを見ると、木の葉どころか身の丈七尺もある巨漢だった。

「やっ、張卒じゃないか」

「そうだ。近頃、卒の中に入った下ッ端の張飛だ」

賊は、不審そうに、顔見合せて云い合った。自分らの部下の中にいる張飛という一卒だからである。他の大勢の歩卒は、騎馬に追いつけず皆、途中で遅れてしまったのに、張卒だけが、たとえひと足遅れたにせよ、このくらいの差で追いついてきたのだから、その脚力にも、賊将たちは愕いたに違いなかった。

「なんだ、張卒」

李朱氾は、膝の下に、劉備の体を抑えつけ、右手に大剣を持って、その胸いたに擬しながら振り向いていった。

「小方、小方。殺してはいけません。その人間は、わしに渡して下さい」

「何? ……誰の命令で貴様はそんなことをいうのか」

「卒の張飛の命令です」

「ばかっ。張飛は、貴様自身じゃないか。卒の分際で」

と、いう言葉も終らぬ間に、そう罵っていた李朱氾の体は、二丈もうえの空へ飛んで行った。

三

卒の張飛が、いきなり李朱氾をつまみ上げて、宙へ投げ飛ばしたので、

「やっ、こいつが」と、賊の小方たちは、劉備もそっちのけにして、彼へ総掛りになった。