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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

二

よろしくこの人のお力を頼んで、慇懃、冀州へお迎えあるがしかるべきでございましょう。――袁紹お味方と聞えなば、公孫※(「王+贊」、第3水準1-88-37)たりといえども、よも手出しはできますまい」

群臣の重なる者は、みなその意見だった。

韓馥も、また、「それはよからん」と、同意した。

ひとり長史耿武は、憤然と、その非をあげて諫めた。

けれど、彼の直言は、用いられなかった。評定は紛論におちいり、耿武の力説を正しとして、席を蹴って去る者三十人に及んだ。

耿武も遂に、用いられないことを知って、

「やんぬる哉!」と、即日、官をすてて姿をかくした。

けれど、彼は忠烈な士であったから、みすみす主家の亡ぶのを見るに忍びず、日を待って、袁紹が冀州へ迎えられる機会をうかがっていた。

袁紹はやがて、韓馥の迎えによって、堂々と、国内の街道へ兵馬を進めてきた。――忠臣耿武は、その日を剣を握って、道の辺の木陰に待ちかまえていた。

二

耿武は、身を挺して、袁紹を途上に刺し殺し、そして君国の危殆を救う覚悟だった。

すでに袁紹の列は目の前にさしかかった。

耿武は、剣を躍らせて、

「汝、この国に入るなかれ」