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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

四

「いやに役目を鼻にかけるやつだ」と、関羽、張飛は、かたはらいたく思ったが、虫を抑えて、一行の車騎に従い、県の役館へはいった。

やがて、玄徳は、衣服を正して、彼の前に、挨拶に出た。

督郵は、左右に、随員の吏を侍立させ、さながら自身が帝王のような顔して、高座に構えこんでいた。

「おまえは何だ」

知れきっているくせに、督郵は上から玄徳らを見下ろした。

「県尉玄徳です。はるばるのご下向、ご苦労にございました」

拝をほどこすと、

「ああおまえが当地の県の尉か。途々、われわれ勅使の一行が参ると、うすぎたない住民どもが、車騎に近づいたり、指さしたりなど、はなはだ猥雑な態で見物しておったが、かりそめにも、勅使を迎えるに、なんということだ。思うに平常の取締りも手ぬるいとみえる。もちっと王威を知らしめなければいかんよ」

「はい」

「旅館のほうの準備は整うておるかな」

「地方のこととて、諸事おもてなしはできませんが」

「われわれは、きれい好きで、飲食は贅沢である。田舎のことだから仕方がないが卿らが、勅使を遇するに、どういう心をもって歓待するか、その心もちを見ようと思う」

意味ありげなことをいったが、玄徳には、よく解し得なかった。