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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

六

六

予定の計画である。李儒は、はっと答えるなり、用意の宣言文をひらいて、

「策文っ――」

と高らかに読み始めた。

孝霊皇帝

眉寿ノ祚ヲ究メズ

早ク臣子ヲ棄給ウ

皇帝承ケツイデ

海内側望ス

而シテ天資軽佻

威儀ツツシマズシテ慢惰

凶徳スデニアラワレ

神器ヲ損イ辱シメ宗廟ケガル

太后マタ教エニ母儀ナク

政治統テ荒乱

衆論ココニ起ル大革ノ道

李儒は、さらに声を大にして読みつづけていた。

百官の面は色を失い、玉座の帝はおおのき慄え、嘉徳殿上寂として墓場のようになってしまった。

すると突然、

「ああ、ああ……」

と、嗚咽して泣く声が流れた。帝の側にいた何太后であった。

太后は涙にむせぶの余り、ついに椅子から坐りくずれ、帝のすそにすがりついて、

「誰がなんといっても、あなたは漢の皇帝です。うごいてはいけませんよ。玉座から降ってはなりませんよ」

と、いった。

董卓は、剣を片手に、

「今、李儒が読み上げた通り、帝は闇愚にして威儀なく、太后は教えにくらく母儀の賢がない。――依って今日より、現帝を弘農王とし、何太后は永安宮に押しこめ、代るに陳留王をもって、われらの皇帝として奉戴する」

いいながら、帝を玉座から引き降ろして、その璽綬を解き、北面して臣下の列の中へ無理に立たせた。