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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

四

するとまたもや前面にむらがっていた敵影の中から、カンカンカンカンと※子の音が高く鳴ったと思うと、曹操の身一つを的に、八方から疾風のように箭が飛んで来た。

「最期だっ。予を助けよ。誰か味方はいないか!」

さすがの曹操も、思わず悲鳴をあげながら、身に集まる箭を切り払っていた。

四

――時に、彼方から誰やらん、おうっ――と吠えるような声がした。

見れば、左右の手に、重さ八十斤もあろうかと見える戟をひっさげ、敵の真っただ中を斬り開いて馳せつけて来る者がある。馬も人も、朱血を浴びて、焔が飛んで来るようだった。

「ご主君、ご主君っ、馬をお降りあれ。そして地へ這いつくばり、しばらく敵の矢をおしのぎあれ」

矢攻めの中に立ち往生している曹操へ向って、彼は近よるなり大声で注意した。

誰かと思えば、これなん先ごろ召抱えたばかりの悪来――かの典韋であった。

「おお、悪来か」

曹操は急いで馬を跳び下り、彼のいう通り地へ這った。

悪来も馬を降りた。両手の戟を風車のように揮って矢を払った。そして敵軍に向って濶歩しながら、

「そんなヘロヘロ矢がこの悪来の身に立ってたまるか」

と、豪語した。