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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

四

「それへ来るは、何者の軍隊か。帝いま、皇城に還り給う。道をふさぐは不敬ではないか」

と、大喝した。

すると、

「おうっ。吾なり」

と吠えるが如き答が、正面へきた軍の真ん中に轟き聞えた。

千翻の旗、錦繍の幡旗、さっと隊を開いたかと見れば駿馬は龍爪を掻いて、堂々たる鞍上の一偉夫を、袁紹の前へと馳け寄せてきた。

これなん先頃から洛陽郊外の池に兵馬を駐めたまま、何進が再三召し呼んでも動かなかった惑星の人――西涼の刺史董卓であった。

董卓、字は仲穎、隴西臨(甘粛省岷県)の生れである。身長八尺、腰の太さ十囲という。肉脂豊重、眼細く、豺智の光り針がごとく人を刺す。

袁紹が、

「何者だっ」

と、咎めたが、部将などは眼中にないといった態度で、

「天子はいずこに在すか」

と、鹵簿の間近まで寄ってくる様子なのだ。帝は、戦慄されて、お答えもなし得ないし、百官も皆、怖れわななき、さすがの袁紹さえも、その容態の立派さに、呆っ気にとられて阻めもできなかった。

すると、帝の御駕のすぐうしろから、

「ひかえろッ」

涼やかに叱った者がある。

凜たる音声に、董卓も思わず駒をすこし退いて、

「何。