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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

三

と、重ねて糺した。

すると、席にあった中郎将盧植が、率直に、彼を意見した。

「もうお止めなさい。あまり我意を押しつけようとなさると、天子の廃立に名分をかりて、董公ご自身が、簒奪の肚があるのではないかと人が疑います。昔、殷の太甲無道でありしため、伊尹これを桐宮に放ち、漢の昌邑が王位に登って――」

なにか、故事をひいて、学者らしく諫言しかけると、董卓は、

「だまれっ、だまれっ――貴様も血祭りに首を出したいのか」

と激怒して、周囲の武将をかえりみ、

「彼を斬れっ。斬っちまえ。斬らんかっ」と指さし震えた。

けれど、李儒は、押止め、

「いけません」と、いった。

「盧植は海内の学者です。中郎将としてよりも、大儒として名が知られています。それを董卓が殺したと天下へ聞えることは、あなたの不徳になります。ご損です」

「では、追っ払えっ」

董卓は、またつづけざまに怒号した。

「官職を引っ剥いでだぞ。――盧植を官に置こうという者はおれの相手だ」

もう、誰も止めなかった。

盧植は、官を逐われた。この日から先、彼は世を見限って、上谷の閑野にかくれてしまった。

それは、さておき、饗宴もこんなふうで、殺伐な散会となってしまった。