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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页
はじめのうち彼は、五人の中で彼女がいちばん醜く、畸型児のようだと思った。にもかかわらず時が経つにしたがって、その醜さと、畸型児のような躯つきが、彼の眼をひきつけ、神経をたぐりこんだ。その小さく肥えた肉躰は、乳房と腰部だけが発達し、そこだけが生きて動いているようにみえた。脂肪で襞のできたまるい腹。骨盤の極端なひろがり。薦椎の左右にはっきりと二つ窪みのある臀部は、柔軟で豊満に重たげで、その中に飽くことのない欲望を秘めているようにみえた。
彼女にはかなり強い躰臭があり、ときにそれが弱まったり強く匂ったりすることに、彼は気がついた。ことに強くなったときの躰臭を嗅ぐと、彼は全身が燃えるようになり、頭に血が充満して、くらくらとめまいにおそわれることもある。彼は欲求の烈しさを抑えきれないと知ると、工場の裏へとびだして、芦の茂みの中へ跼みにゆくのであった。町の悪童どもはしばしばそれを見た。芦の茂みは浅い沼に続いてい、そこでは鮒ややなぎ鮠がよくとれるからだ。
「おったねえのよ、なあ」と少年たちはあとで話しあう、「おんだらが見てえても平気なのよ、な、ちえっ、おったねえの」