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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

――手前の店なども一物もなく没収され、あげくの果てに、妻も娘も、暴兵にさらわれてしまったのです」

「むむ。なるほど」

「で、甥の蘇双と二人して、馬商人に身を落し、市から馬匹を購入して、北国へ売りに行こうとしたのですが、途中まで参ると、北辺の山岳にも、黄賊が道をふさいで、旅人の持物を奪い、虐殺をほしいままにしておるとのことに、むなしくまた、この群馬をひいて立ち帰ってきたわけです。南へ行くも賊国、北へおもむくも賊国、こうして馬とともに漂泊しているうちには、ついに賊に生命まで共に奪われてしまうのは知れきっています。恨みのある賊の手に武力となる馬匹を与えるよりも、貴下の如きお志を抱く人に、進上申したほうが、はるかに意味のあることなんです。よろこんで手前がお渡しする気持というのは、そんなわけでございます」

「やあ、そうか」

関羽の疑問も氷解して、

「では、楼桑村まで、馬をひいて一緒に来てくれないか。われわれの盟主と仰ぐ劉玄徳と仰っしゃる人にひきあわせよう」

「おねがい致します。手前も根からの商人ですから、以上申上げたような理由でもって、無料で馬匹を進上しましても、やはりそこはまだ正直、利益のことを考えておりますからな」