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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页
幸い雨のない日が続いた。十方碧落、一朶の雲もない秋だった。黍のひょろ長い穂に、時折、驢も人の背丈もつつまれる。
「ああ――」
旅に倦んで、馬元義は大きなあくびを見せたりした。甘も気だるそうに居眠り半分、足だけを動かしていた。
そんな時、劉備はふと、
――今だっ。
という衝動にかられて、幾度か剣に手をやろうとしたが、もし仕損じたらと、母を想い、身の大望を考えて、じっと辛抱していた。
「おう、甘洪」
「へえ」
「飯が食えるぞ。冷たい水にありつけるぞ――見ろ、むこうに寺があら」
「寺が」
黍の間から伸び上がって、
「ありがてえ。大方、きっと酒もありますぜ。坊主は酒が好きですからね」
夜は冷え渡るが、昼間は焦げつくばかりな炎熱であった。――水と聞くと、劉備も思わず伸び上がった。
低い丘陵が彼方に見える。
丘陵に抱かれている一叢の木立と沼があった。沼には紅白の蓮花がいっぱい咲いていた。
そこの石橋を渡って、荒れはてた寺門の前で、馬元義は驢をおりた。門の扉は、一枚はこわれ、一枚は形だけ残っていた。それに黄色の紙が貼ってあって、次のような文が書いてあった。
蒼天已死
黄夫当レ立