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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

賄賂をうけた者には、功なき者へも官禄を与え、しからざる者は、罪なくても官を貶し、いやもう、ひどい沙汰です」

帝の御気色は、いよいよ曇って見えた。けれど、帝は何もいわれなかった。

十常侍というのは、十人の内官のことだった。民間の者は、彼らを宦官と称した。君側の権をにぎり後宮にも勢力があった。

議郎張譲、議郎趙忠、議郎段珪、議郎夏輝――などという十名が中心となって、枢密に結束をつくっていた。議郎とは、参議という意味の役である。だからどんな枢密の政事にもあずかった。帝はまだお若くあられるし、そういう古池のぬしみたいな老獪と曲者がそろっているので、彼らが遂行しようと思うことは、どんな悪政でもやって通した。

霊帝はまだご若年なので、その悪弊に気づかれていても、いかんともする術をご存じない。また、張均の苦諫に感動されても、何というお答えもでなかった。ただ眼を宮中の苑へそらしておられた。

「――遊ばしませ、ご断行なさいませ。今がその時です。陛下、ひとえに、ご賢慮をお決し下さいませ」

張均は、口を酸くし、われとわが忠誠の情熱に、眦に涙をたたえて諫言した。

遂には、玉座に迫って、帝の御衣にすがって、泣訴した。