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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

だが、やがて少し落着くと、

「県尉の玄徳はどうしたっ」

と、うわ言みたいに呶鳴った。

その玄徳は、官の印綬を解いて、あなたの首へかけると、捨てぜりふをいって馳け走りましたが、今宵、一族をつれて夜逃げしてしまったという噂です――と側の者が告げると、

「なに。逃げ落ちたと。――ではあの張飛という奴もか」

「そうです」

「おのれ、このまま、おめおめと無事に、逃がしてなろうか。――つ、つかいを、すぐ急使をやれっ」

「都へですか」

「ばかっ。都へなど、使いを立てていたひには間にあうものか。ここの定州(河北省・保定・正定の間)の太守へだ」

「はっ。――何としてやりますか」

「玄徳、常に民を虐し、こんど勅使の巡察に、その罪状の発覚を恐るるや、かえって勅使に暴行を加え、良民を煽動して乱をたくめど、その事、いちはやく官の知るところとなり、一族をつれて夜にまぎれ、無断官地を捨てて逃げ去る――と」

「はっ。わかりました」

「待て。それだけではいかん。すぐさま、迅兵をさし向けて、玄徳らを召捕え、都へご檻送くださるべしと、促すのだ」

「心得ました」

早馬は、定州の府へ飛んだ。

定州の太守は、