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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

古びて見る面影もないがそれは凡人の佩く剣ではない。琅の珠がついていたはず、戛玉とよぶ珠だよ。剣帯に革か錦の腰帛もついていたのだよ。王者の佩とそれを呼ぶ。何しろ、刀身も無双な名剣にまちがいない。試してみたことがおありかの」

「……?」

堂の外へ先に出たが、後から劉備が出てこないので、足を止めていた賊の馬元義と甘洪は、老僧のぶつぶついっていることばを、聞きすましながら振向いていた。が、――しびれをきらして、

「やいっ劉。いつまで何をしているんだ。荷物を持って早くこいっ」と、どなった。

老僧は、まだ何か、いいつづけていたが、馬の大声に恟んで、急に口をつぐんだ。劉備はその機に、堂の外へ出てきた。

驢をつないでいる以前の門を踏みだすと、馬元義は、驢の手綱をときかける手下の甘を止めて、

「劉、そこへ掛けろ」と、木の根を指さし、自分も石段に腰かけて、大きく構えた。

「今、聞いていると、てめえは行く末、偉い者になる人相を備えているそうだな。まさか、王侯や将軍になれっこはあるめえが、俺も実は、てめえは見込みのある野郎だと見ているんだ――どうだ、俺の部下になって、黄巾党の仲間へ加盟しないか」