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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

道士は手に藜の杖をもち、

(お前を待っていること久しかった)と、さしまねくので、ついて行ってみると、白雲の裡の洞窟へ誘い、張角に三巻の書物を授けて、(これは、太平要術という書物である。この書をよく体して、天下の塗炭を救い、道を興し、善を施すがよい。もし自身の我意栄耀に酔うて、悪心を起す時は、天罰たちどころに身を亡ぼすであろう)と、いった。

張角は、再拝して、翁の名を問うと、

(我は南華老仙なり)と答え、姿は、一颯の白雲となって飛去ってしまったというのである。

張角は、そのことを、山を降りてから、里の人々へ自分から話した。

正直な、里の人々は、(わしらの郷土の秀才に、神仙が宿った)と真にうけて、たちまち張角を、救世の方師と崇めて、触れまわった。

張角は、門を閉ざし、道衣を着て、潔斎をし、常に南華老仙の書を帯びて、昼夜行いすましていたが、或る年悪疫が流行して、村にも毎日おびただしい死人が出たので、

(今は、神が我をして、出でよと命じ給う日である)

と、おごそかに、草門を開いて、病人を救いに出たが、その時もう、彼の門前には、五百人の者が、弟子にしてくれといって、蝟集してぬかずいていたということである。