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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

おそらく、纂奪を企む者でなくば、そんな暴言は吐けまい」

皮肉ると、董卓は、

「だまれっ、われに反く者は死あるのみだぞ」

繍袍の袖をはねて、佩剣の柄に手をかけた。

「なにをする気か」

丁原は、びくともしなかった。

それも道理、彼のうしろには、一個の偉丈夫が儼然と立っていて、

(丁原に指でもさしてみろ)といわんばかり恐ろしい顔していた。

爛々たるその眸、凜々たる威風、見るからに猛豹の気がある。

董卓の股肱として、常に秘書のごとく側へついている李儒は、あわてて主人の袖を引っぱった。

「きょうは折角の御宴です。かたくるしい国政向きのことなどは、席を改めて、他日になすっては如何です。とかく酒気のあるところでは、論議はまとまりません」

「……む、うむ」

董卓も、気づいたので、不承不承、剣の柄から手をさげた。しかしどうも、丁原のうしろに立っている男が気になってたまらなかった。

三

――けれど、董卓の野望は、丁原に反対されたぐらいで、決してしぼみはしなかった。

大饗宴の席は一時、そんなことで白け渡ったが、酒杯の交歓ひとしきりあると、董卓はまた起って、

「最前、予の述べたところ、おそらく諸君の意中であり、天下の公論と思うがどうだろう」