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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页
すると、許子将は、学究らしい薄べったくて、黒ずんだ唇から、抜けた歯をあらわして、
「豎子、何をいう! お前なんぞは、治世の能臣、乱世の姦雄だ」
と、初めて答えた。
聞くと、曹操は、
「乱世の姦雄だと。――結構だ」
彼は、満足して去った。
間もなく。
年二十で、初めて北都尉の職についた。
任は皇宮の警吏である。彼は就任早々、掟を厳守し、犯す者は高官でも、ビシビシ罰した。時めく十常侍の蹇碩の身寄りの者でも、禁を破って、夜、帯刀で禁門の附近を歩いていたというので、曹操に棒で殴りつけられたことがあったりした程である。
「あの弱冠の警吏は、犯すと仮借しないぞ」
彼の名はかえって高まった。
わずかな間に、騎都尉に昇進し、そして黄巾賊の乱が地方に起ると共に、征討軍に編入され、潁川その他の地方に転戦して、いつも紅の旗、紅の鞍、紅の鎧という人目立つ備え立てで征野を疾駆していたことは、かつて、張梁、張宝の賊軍を潁川の草原に火攻めにした折、――そこで行き会った劉玄徳とその旗下の関羽、張飛たちも、
(そも、何者?)
と、目を見はったことのあるとおりである。
そうした彼。
そうした人となりの驍騎校尉曹操であった。