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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

わけて、第十六鎮の部隊には、時を待っていた深淵の蛟龍がいた。

北平の太守で奮武将軍の公孫がその十六鎮の軍であったが、檄に応じて、北平から一万五千余騎をひっさげて南下してくる途中、冀州の平原県(山東省・津滬線平原)のあたりまで来かかると、

「しばらくっ、しばらくっ!」

と、大声をあげて、公孫※(「王+贊」、第3水準1-88-37)の馬を止めた者がある。

「何者か?」と、旗本たちが振りかえると、かたわらの桑畑の中を二、三旒の黄なる旗がざわざわと翻りつつ、此方へ近づいてくるのが見える。

「や? 何処の武士どもか」と、疑っている間に、それへ現れた三騎の武人は、家来の雑兵約十名ばかりと共に公孫※(「王+贊」、第3水準1-88-37)の馬前にひざまずいて、

「将軍、願わくば、われわれ三名の者も、大義の軍に入れて引具し給え。不肖ながら犬馬の労を惜しまず、討賊の先陣に立って、尽忠の誠を、戦場の働きに見せ示さんと、これにてご通過を待ちうけていた者でござります」と、いった。

公孫※(「王+贊」、第3水準1-88-37)は、初めのうち、さてはこの辺の郷士かとながめていたが、そういう三名の中に、一名だけ、どこかで見覚えのある気がしたので、思いよりのまま試みに、