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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

その血相に、誰も、「あれほどいうからには」と、信じきって、仲直りに、杯を挙げて別れたところが、なんぞ計らん、それから一刻も経たないうちに、孫堅の陣地には、もう一兵の影も見えなかった。

「さては、怪しい?」と、袁紹も焦立ち、諸侯の陣もなんとなく動揺しだして見えた所へ、さきに董卓を追って、陽で大敗を喫した曹操が、わずかな残兵をひいて、洛陽へ帰って来た。

袁紹は、折も折とて、彼に計ろうと酒宴を設け、諸侯を呼んで、曹操を慰めると、曹操はむしろ憤然として、

「口に大義を唱えても、心に一致する何ものもなければ、同志も同志ではない。いたずらに民を苦しめ、無益の人命と財宝を滅すのみだ。小生はしばらく山野へ帰って考え直す。諸氏も、熟慮してみたがよかろう」と、即日、洛陽を去って揚州の方面へ立ってしまった。

その頃、孫堅はすでに、ひた走りに本国へさして逃げ帰っていた。

途中。

袁紹の追討令で、追手の軍に追われたり、諸城の太守に遮められたり、さんざんな憂き目に遭ったが、ついに黄河のほとりまで逃げのびて、一舟を拾い、からくも江東へ逃げ渡った。

舟中の身辺をかえりみると、幕下の将兵わずか数名しかいなかった。