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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

「いや程普、それくらいなことは、自分も心得ておるよ。袁術はもとより詐り多き小人だ。――しかし、予は彼の力をたのんで兵を興すのではない。自分の力をもってするのだ」

「けれど、兵を挙げるには、正しい名分がなければなりません」

「袁紹は先に、洛陽において、わしをあのように恥かしめたではないか。また、劉表はそのさしずをうけて、予の軍隊を途中で阻み、さんざんにこの孫堅を苦しめた。今、その恥と怨みとをそそぐのだ」

程普も、それ以上、諫言のことばもなく、自らまたすすんで軍備を督励した。

吉日をえらんで、五百余艘の兵船は、大江を発するばかりとなった。――早くもこの沙汰が、荊州の劉表へ聞えたので、劉表は、

「すわこそ」と、軍議を開いて、その対策を諸将にたずねた。

時に、良という一将がすすみ出て、意見を吐いた。

「なにも驚き騒ぐほどな敵ではありません。よろしく江夏城の黄祖をもって、要害をふせがせ、荊州襄陽の大軍をこぞって、後軍に固く備えおかれれば、大江を隔てて孫堅もさして自由な働きはできますまい」

人々も皆、

「もっともな説」と、同意して、国中の兵力をあつめ、それぞれ防備の完璧を期していた。