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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

そして大音に、

「四民を悩ます害虫ども、もはや免しはおかぬ。県の劉備玄徳が腕のほどを見よや」

といって、捨身になった。

賊の小方、李朱氾は笑って、

「この百姓めが」と半月槍をふるってきた。

もとより劉備はさして武術の達人ではない。田舎の楼桑村で、多少の武技の稽古はしたこともあるが、それとて程の知れたものだ。武技を磨いて身を立てることよりも、蓆を織って母を養うことのほうが常に彼の急務であった。

でも、必死になって、七人の賊を相手に、ややしばらくは、一命をささえていたが、そのうちに、槍を打落され、よろめいて倒れたところを、李朱氾に馬のりに組み敷かれて、李の大剣は、ついに、彼の胸いたに突きつけられた。

――おおういっ。

すると、……いやさっきからその声は遠くでしたのだが、剣戟のひびきで、誰の耳にも入らなかったのである。

遥か彼方の野末から、

「――おおういっ。待ってくれい」

呼ばわる声が近づいてくる。

野彦のように凄い声は、思わず賊の頭を振り向かせた。

両手を振りながら韋駄天と、こなたへ馳けてくる人影が見える。その迅いことは、まるで疾風に一葉の木の葉が舞ってくるようだった。