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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

貂蝉は、慟哭して、床に伏しまろびながら、

「……わ、わかりました。これはきっと、李儒が呂布に頼まれて、太師へそんな進言をしたにちがいありません。あの人と呂布とは、いつも太師のいらっしゃらない時というと、ひそひそ話していますから。……そうです。太師はもう、私よりも、李儒や呂布のほうがお可愛いんでしょう。わたしなどはもう……」

董卓は、やにわに、彼女を膝に抱きあげて、泣き濡れているその頬やその唇へ自分の顔をすり寄せて云った。

「泣くな、泣くな、貂蝉、今のことばは、冗戯じゃよ。なんでそなたを、呂布になど与えるものか。――明日、塢の城へ帰ろう。※(「眉+おおざと」、第4水準2-90-21)塢には、三十年の兵糧と、数百万の兵が蓄えてある。事成れば、そなたを貴妃とし、事成らぬ時は、富貴の家の妻として、生涯を長く楽しもう。……嫌か、ウム、嫌ではあるまい」

次の日――

李儒は改まって、董卓の前に伺候した。ゆうべ、呂布の私邸を訪い、恩命を伝えたところ、呂布も、深く罪を悔いておりました――と報告してから、

「きょうは幸いに、吉日ですから、貂蝉を呂布の家にお送りあってはいかがでしょう。