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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

「あっ! ……では汝は、鴻家の旧臣だな」

「いま気がついたか。此方は県城の南門衛少督を勤めていた鴻家の武士で名は張飛、字は翼徳と申すものだが無念や此方が他県へ公用で留守の間に、黄巾賊の輩のために、県城は焼かれ、主君は殺され、領民は苦しめられ、一夜に城地は焦土と化してしまった。――その無念さ、いかにもして怨みをはらしてくれんものと、身を偽り、敗走の兵と化けて、一時、其方どもの賊の中に、卒となって隠れていたのだ。――大方馬元義にも、また、総大将の兇賊張角にも、よく申しておけ。いずれいつかはきっと、張飛翼徳が思い知らせてくるるぞと」

雷のような声だった。

豹頭環眼、張飛がそういってくわっと睨めつけると、賊の小方らは、足もすくんでしまったらしいが、まだ衆をたのんで、

「さては、鴻家の残兵だったか。そう聞けばなおのこと、生かしてはおけぬ」と、一度に打ってかかった。

張飛は、腰の剣も抜かず、寄りつく者をとっては投げた。投げられた者は皆、脳骨をくだき、眼窩は飛びだし、またたくうちに碧血の大地、惨として、二度と起き上がる者はなかった。

劉備は、茫然と、張飛の働きをながめていた。