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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页
「やっ、なんだっ」
寄手の諸将はためらい合ったが、曹操はもう濠の吊橋を騎馬で馳け渡りながら、
「田氏の合図だっ。何をためらっているか。この機に突っこめっ――」と、振向いてどなった。
とたんに、正面の城門は、内側から八文字に開け放されていた。――さては、田氏の密書に嘘はなかったかと、諸将も勢いこんで、どっと門内へなだれ入った。
――が、とたんに、
「わあっ……」
と、闇の中で、喊声があがった。敵か味方か分らなかったし、もう怒濤のように突貫の行き足がついているので、にわかに、駒を止めて見返してもいられなかった。
すると、どこからともなく、石の雨が降って来た。石垣の陰や、州の政庁の建物などの陰から、同時に無数の松明が光りかがやき、その数は何千か知れなかった。
「や、や、やっ?」
疑う間に投げ松明だ。軍馬の上に、大地に、に、袖に、火の雨がそそがれ出したのである。曹操は仰天して、突然、
「いかんっ。――敵の謀計にひッかかった。退却しろ」
と、声をかぎりに後ろへ叫んだ。
七
敵の計に陥ちたとさとって、曹操が、しまったと馬首をめぐらした刹那、一発の雷砲が、どこかでどん――と鳴った。