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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页
「おら抵抗しなかっただ」と少年は自分に対する声援に力を得て、声と身ぶりにたっぷりと効果を加えながら叫んだ、「――おらなんにも抵抗しなかった、おら死んじまうよう、おっかあ、痛えよ痛えよう」
「歩け」と私服の一人が少年を小突いた、「おとなしくしろ」
「おら死んじまうよーっ」
「旦那方」と千本のあるじの和助が前へ出て来た、「おめえさん方あその子供をそのまま連行するつもりかえ」
私服たちは振り返った。
「その血をみせえま」と和助は続けた、「そのまま連行すれば、出血多量で途中で死んじまあだぜ」
「そうだ、死んじまあだ」とみんなが口ぐちに喚いた、「一町といかねえうちにおっ死んじまうだ、銀がそれほどの罪を犯したかえ、死げえにするほど悪いことをしたかえ」
私服たちは立停った。三人ともすっかりあがっていて、むしろ怯えていたというべきだろう、硬ばった顔で、眼のやりばもなく、三人ともふるえていた。
「おらの店へ伴れて来せえま」と和助が云った、「ちょっと手当をして、血だけでも止めてっからいくがいいだ、さあ銀、来な」
和助は銀公の腕を取って、店のほうへ伴れていった。そこにいる人たちもいっしょについてゆき、三人の私服はなにか囁きあっていたが、一人を残して、他の二人は誰にも気づかれないように、小さくなって、堀のほうへ去っていった。