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あおべかものがたり

青べか物語

山本 周五郎

「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页

青空文庫

銀公は縁台に腰を掛け、傷の手当をしてもらいながら、なお派手な声で叫び、泣き、訴え続けていた。

「しっかりしろ銀」と若い船頭の一人が、銀公の演技に調子を合わせて云った、「しょうばいにんが賭場を開帳したわけじゃねえ、友達同士が慰みにやった一文ばなだ、本署へ持ってゆかれたって始末書を取られるか、悪くいったって罰金くれえで済むだろう」

「おら博奕なんかしやしなかった」

「そうだ、いしゃ博奕はしなかった」

「おら抵抗もしなかった」

「そうだ、みんなが証人だ」とその船頭は続けた、「いしゃ博奕もしねえし抵抗もしなかった、だからいばって出るとけへ出ろ、こんな小さな子供にこんなけがをさせて、どっちに罪があるかはっきり裁判をしてもらえ」

「みんなに逃げられたいしばらしだろ」と誰かが云った、「こんなひでえ話はおら聞いたこともねえ」

私服は蒼くなってふるえていた。彼は法律を行使したのであるが、いまやその法律が彼を指弾し譴責するように思えたらしい。職権濫用とか、過剰処置とか、罷免とか、その他さまざまな法律用語が頭にうかんでくる、といったような、絶望的な顔つきになっていた。

「さあよし」