轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页
彼はじっと川の水面を睨んでいる。無関心に見ると考えごとでもしているようだが、全神経を集注して睨んでいるので、その証拠には、水面にごみがなくなったとみた刹那、さっと手桶で水を汲むのである。――そこまでの慎重さもたぐい稀なものだが、それで終ったわけではない。こんどは手桶の脇に跼んで、いま汲んだ水を睨む。時間などはてんで頭にないようで、ゆっくりと、おちつきはらって睨んでおり、まったくごみがなければよし、ほんの僅かなごみでもあれば、その水は惜しげもなく川へあけてしまい、また流れの面を辛抱づよく睨むのであった。
初めて私がその男を観察したときは、そうとは知らなかったし、自分は釣りをしていたので、時間の経過には気づかなかったが、二つの手桶に汲み終るまで、二時間ちかくはかかったであろう。その男が満足して、天秤棒で二つの手桶を担ぎ、ゆうゆうと歩き去ったときには、もう倉なあこもそこにはいなかったのである。
水を汲むのに二時間ちかくもかかったというと、たぶん信用しない人のほうが多いだろう、私も初めてのときはそれほどとは感じなかった。けれども二度めに見、三度めに見、そののちしばしば観察するに及んで、二時間くらいはざらであり、ときには半日ちかくもかかるのを実際に見た。