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あおべかものがたり
青べか物語
山本 周五郎
「文藝春秋」1960(昭和35)年1月号~1961(昭和36)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,888 字 · 317 页
のことを父に話した。
「おめえにも肝煎るだな」と温厚な父親は云った、「そんな砂ぐれえ、一丈も積んだわけじゃあるめえし、なぜ蹴っぱらってへえっていかなかっただ」
「お父つぁんは見ないからわからないが」と五郎さんは答えた、「寝床のまわりへぐるっと、砂を撒くところを見てみな、呪禁でもされてるみたいでそりゃあ凄いもんだから」
父親は想像してみたが、少しも凄いような感じはしなかった。
「砂ぐれえがなんだ、砂が恐ろしくって海へいけっか」と父親は云った、「喪があけても砂を撒いたのは、おめえが蹴っぱらってへえって来るのを待っていたということだ、そのくれえの察しはつくべえじゃねえかええ」
五郎さんは黙った。
事情を聞いた父親は、すぐに嫁を捜し始めた。早くあとを貰って、篠咲をみかえしてやらなければ、五郎さんばかりでなく「みその」の看板にもかかわる、と思ったからだ。
だが特報は第一級であり、根深く、広範囲に拡まっていた。「幟もおっ立たない」ような息子に、嫁を遣ろうという親はなかった。このあいだに、五郎さんは五郎さんで友人たちとやりあい、ごろさんの話が事実なら、男として役立つかどうかためしてみよう、ということになり、かれらは五郎さんを伴れだして、東京のさる華やかな一画へ押しあがった。