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めいじせそうひゃくわ

明治世相百話

山本 笑月

線上閱讀山本 笑月《明治世相百話(めいじせそうひゃくわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 128,862 字 · 251 頁

青空文庫

心細い紅葉の名所

心細い紅葉の名所

風流の名残り大岡氏の別荘

秋の紅葉も東都は古来貧弱、川柳で知られた下谷の正灯寺は江戸の昔とっくに形なし、端唄で聞えた海晏寺、王子滝野川、角筈十二社、少し離れて真間の弘法寺など明治時代に持ち越したが、いずれも評判ほどの眺めもなく、今日にては全く噂にも上らぬ有様、交通の便は日光、塩原などの本場へぞろぞろ。

海晏寺は後園の上、落ち着いた景趣はあるが狭い場所へ床几を並べて茶亭が一軒、老木数株の紅葉を眺めて、はい左様ならというくらい。王子は不動院の境内を抜けて弁天池のほとり、音無川の清流をはさんで、ちょっと山間らしい場所、流れに臨んで掛茶屋もあり、橋を渡れば料理屋もあった。まず近郊の紅葉としてはいささか名所らしく見られたものの、交通不便の当時は市内からちょっと億劫で足が向かぬ。

よくよく閑な風流家が枯野をかけて紅葉狩、ススキの種で造ったミミズクのお土産、竹の先へついたのを肩にしてぶらぶらの近郊巡り、まあそんな時代もあったと思し召せ。話は個人に移るが、明治二十六、七年ごろ、駒込千駄木にあった大岡育造氏の別荘、広くはないが庭一面に大盃という楓樹の林、霜に染むる紅葉の色は格別の美しさ、毎年知人を招いて観楓のむしろを開いた。