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めいじせそうひゃくわ
明治世相百話
山本 笑月
線上閱讀山本 笑月《明治世相百話(めいじせそうひゃくわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 128,862 字 · 251 頁
場末の夏は虫の声々
違時代の昼寝の夢にも見なかった大変化。
場末の夏は虫の声々
風流思いのままだった時代
市内でバッタを追い回した時分、少し場末では秋の虫聴きなどいう風流も自由で、山の手には蛍や虫の名所も多かった。その郊外も今は新市域となって文化式の建物だくさん、虫といってはせいぜいコオロギにハタオリぐらい、縁日で売るクツワ虫や草ひばりなど、文字通り草を分けて尋ねても影さえ見えぬは開けたもの。
お茶の水や江戸川端の蛍は知らぬが、駒込、田端、西ヶ原辺には夜ごとほたるの光り、それが王子となると、本場で虫も一倍大きな奴がふわりふわり。明治二十年頃までは田端から道灌山へかけては虫の種類も多く、がちゃがちゃのクツワ虫始めカンタン、草ひばり、バッタ、コオロギ、キリギリス、但し鈴虫、松虫の類は専門家が作るので除外例だが、そのほかの虫にはたいてい聞き倦きたものだ。
今の省線駒込駅の付近がまだ茅ぶき屋根の多かった頃、拙宅の垣の外は、やぶ畳に草原の未開地。夏から秋の夕べはさまざまの虫が競争で鳴き立てる。ことにクツワ虫のあの一匹でも喧ましいがちゃがちゃ声が無数に集まる騒々しさ、客があっても話が出来ぬくらい、よんどころなく提灯を手にして虫退治、みるみる十匹以上毎夜のようにつかまえて、わざわざ遠くへ捨ててくる。