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めいじせそうひゃくわ
明治世相百話
山本 笑月
線上閱讀山本 笑月《明治世相百話(めいじせそうひゃくわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 128,862 字 · 251 頁
回り縁の八畳の座敷へ通る。庭先には高さ二尺もある真鍮の金網をかけ、秋草を植え込んだ立派な虫籠が五つも並べてあった。ほどなく主人公の団十郎はじみな縞縮の単衣に鼠ちりめんの兵児帯という扮装で現われる。舞台とはかけ離れて白髪まじりの少し残った禿頭、眼は評判だけにいささか大きい、受唇で頬のこけたところ、品格はあるが日本一の名優かとはお釈迦様でも気がつくまい。
私が釣のお話を伺いに出ましたというと、当時同優は持病の喘息の烈しい時で、挨拶よりも咳きいる方が先で、気の毒なほど苦しそうであった。それでもちょっと微笑して「イヤ遠方までわざわざ恐れいったことで、しかしお話するほどのこともありませんが、まあ御緩り……」という中にもひどく咳きいる。猿蔵のお婆さんが気をもんで介抱する。
「この通り持病でお話も致しかねるくらい、染五郎(今の幸四郎)がおればいろいろ知っていますが、生憎来ておりません。しかし升蔵が来ておりますから、あれに何でもお尋ね下さい」と升蔵を呼び、「私はちょっとこれで失礼します、またお帰りに」と挨拶して次の六畳へ立って行く。咳が烈しく聞える。
升蔵は当時名題下の利け者、踊にかけては立者も及ばぬ腕前であった。