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Japanische Klassiker mit Furigana

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こどうひゃくわ

胡堂百話

野村 胡堂

Lesen Sie 胡堂百話 (こどうひゃくわ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 124.386 Zeichen · 248 Bildschirme

Aozora Bunko

このあたりまで来ると、芳助は、なんとなくソワソワして「以前、うちの女中をしていた女が、この辺にいるんだ。ちょっと、顔を見てこよう」。

しゃくり上げるような眼付きで、私の方を振り向いた。どういう、いわくの女だか、そんなことは構わないが一体、あのころ私たちは、どのくらいの小遣いを持っていただろう。私の下宿が、三食で一カ月三円也。六畳の部屋代が一円五十銭。布団は、郷里の妹が手織りで作ったのを送って来たが、机は夜店で一閑張りを買った。言い値が八十銭か八十五銭だったのを、大分ねばって六十銭で買って帰ると、いい買物だと下宿の女将にほめられた。

だから、十二階下をうろついたって、大した金額ではないのだが、金高よりも何よりも、私は無暗にこわかった。なんとなく立ちすくんでいるうちに、芳助はトントンと上って行ってしまった。いよいよ心細くなって、引き返そうとした時に、

「チョイと、チョイと。兄さんてば……」

白い手が、するすると延びて、私の襟元にからみついた。

「おいッ」

と、私は芳助を呼んだつもりなのだが、とっくの昔に消えていた。女は委細かまわず、私を引っぱり上げようとする。