Japanische Klassiker mit Furigana
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こどうひゃくわ
胡堂百話
野村 胡堂
Lesen Sie 胡堂百話 (こどうひゃくわ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 124.386 Zeichen · 248 Bildschirme
毒ゼリ
今から思えば、あの艶本談義を、くわしく心にとめておいたら……と悔まれてならないが、三十代の若僧に、古今の大学者の相手は無理であった。もっと、話を引っぱり出して、ノートでも取ることが出来ていたなら、と、千秋の恨事のような気がしてならない。
毒ゼリ
毒ゼリというものの恐ろしさを、私は、軽井沢で、まざまざと見た。あんなに恐ろしい毒草が、案外の身近にあるかと思うと、慄然とする。
私は戦前から、軽井沢に山小屋があって、夏の三カ月間は、サッサと東京をあとにする。借家ずまいの身で、まず、別荘を持ったのは、まことに主客顛倒であるし、新聞社に籍がありながら、原稿だけを送って、涼しい顔をしていたのは、私のいた新聞社が、不思議な寛大さを持っていたためである。
戦争中は、家をあげて山荘にこもり、林をひらいて、南瓜と馬鈴薯を作った。隣人に、文芸や、音楽を論ずるT画伯があり、夜は、灯火管制の空の下に、のちの文相前田多門、宮内庁長官田島道治氏らの疎開仲間と、T氏の美術論に聞き入ったものである。
T氏は、そのまま住みついて、今も浅間の噴煙と、高山植物の美しさとを描きつづけているが、まだ戦争の終らなかった昭和十八年七月、このT氏の夫人が、間違って毒ゼリを食べたのだ。