Japanische Klassiker mit Furigana
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こどうひゃくわ
胡堂百話
野村 胡堂
Lesen Sie 胡堂百話 (こどうひゃくわ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 124.386 Zeichen · 248 Bildschirme
画家になる夢
父親というのは、ありがたいもので、五十幾年もたった今日でも、どうかすると、夢を見る。夢の中の父親は、手のつけようもないほど不機嫌で、
「馬鹿者め、絵描きになりたいなどとは何事だッ」
と、しかるのである。
私の父親は酒はきらいであったが、恐ろしくタバコずきで、まことに機嫌のよい人であった。何時も、いやな顔を見せたことがなく、大きな声で、屈託のない話をするのがすきだった。それが、この時ばかりは声をふるわせて怒ったのである。絵描きになりたいと言った私の言葉が、よほど、カンにさわったのであろう。
私は大人になってから、三年に一度くらい、気が向くと水彩画を描いてきた。いま、あるのは、郷里の家の白壁の土蔵と、軽井沢の緑陰と、二枚だけになってしまったが、これを自分の居間の壁に、広重の五十三次や、マチスのクロッキーと並べて臆面もなくかけている。視力さえ許せば、これからも、まだ描いてみたい。
しかし、五十年前の父親には、絵を生涯の仕事にするなどは、全然、理解の外にあったのであろう。父親の見ているのは、村から村を回って、フスマや掛軸に下手くそな松竹梅などを描き、わずかばかりの紙包みをもらってゆく旅絵師の姿だけだった。