Japanische Klassiker mit Furigana
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こどうひゃくわ
胡堂百話
野村 胡堂
Lesen Sie 胡堂百話 (こどうひゃくわ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 124.386 Zeichen · 248 Bildschirme
世間では、よっぽど猫好きのように思っているが、犬の方が、ずっと、好きです」
猫好きなのは、夫人の方だという。漱石研究の本にも、いろいろと書かれているようだが、私は、はっきりと、この耳で聞いた。好きでないから、冷静に観察が出来たのかも知れない。
黒く、つやつやした髪をキチンと分けて、鼻下の短く刈りこんだヒゲが、わずかに胡麻塩になっていた。江戸ッ子らしい機才と、西欧流のユーモアと、それに深い学殖とが、三位一体となっていて、ちょっと形容の出来ない複雑な風格である。
「健康は、もう、すっかりいいのですか」
と、きいてみたら、
「デリケートな時計のぜんまいみたいなもので、こう見えても、すぐ狂います」
ちょっとした一言にも、打てば打ちかえす機鋒が現れる。それから、文芸の話になって
「近ごろ、急にはやりはじめたアナトール・フランスやオスカー・ワイルドは、むろん結構なものではあるが、あちらで、新しく全集が出来て、出版元の商略から、外国雑誌に紹介記事が氾濫した。日本人は、それを真に受けたのですね。日本自身の出版界も、やがて、そんな時代になるかも知れませんよ」
五十年もたった今日、この言葉は、つくづく卓見だったと思っている。