Japanische Klassiker mit Furigana
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にっき
日記
宮本 百合子
Lesen Sie 日記 (にっき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.285 Zeichen · 204 Bildschirme
三月十日
妻 私は、貴方と一緒に、新しい広い人生を見、味おうと思って結婚したのよ。貴方、私と結婚するときに左様那風に思っていらっしゃったの? 私、貴方に自分の活気を皆吸われ、死ぬまでにと思って、かき集める人に侍って居なければならないの?
それなら一そ早々死んで呉れたら、と云う、ぞっとするような望が妻の心に浮き上る。
三月十日(金曜)雨
朝すっかり戸じまりをしてから林町へ行く。道で、襟治により会田さんへのえり三円七十銭のを買って行く。今朝、Aが、そんなに早く行くには及ぶまい、ゆっくり夕方でも行けばよいだろうと云ったのは、いかにも他人らしい感情のこもらない心持だ。いろいろ考えて見ると、母もわるいがAも足りない。実に明かに感じられる。自分から他人の垣を越えようとせず、ある垣を此方からもキープアウトして居る。深い感情が、広く行き渡らないのだ。むずかしいものと思う。自分に対してもどんな感情を持って居るのか、つきつめて考えて見ると懐疑的になる。
いずこも同じ憂き人間の世で、林町へ行くと、又、父上まで、女は度し難い、アメリカへやってさぞ大きくなるかと思ったらさほどでもないし、芸術家ぶって居てもまだ芸術家にはなって居ず、と云うようなことを云われ、自分は反抗以上に淋しい心持がした。