Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にっき

日記

宮本 百合子

Lesen Sie 日記 (にっき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 102.285 Zeichen · 204 Bildschirme

Aozora Bunko

四月二十九日

カフェーばかりのんで居たアメリカの生活を思い出す。此、脳細胞の踊りに心付かなかったほど、あちらでも生活は、頭、心全部が揺れさわめきして居たのか。

「サムソンとデリラ」のことを思う。とくにサムソン。彼が女に迷い、だまかされ、髪を切られて盲目にされ、暗い、永遠の闇の中で粉挽車をぐるぐる日は日ねもす、夜は夜もすがら挽いて居る間、何を考えたか、さわって見て、一厘ずつ一分ずつのびる髪に、いかほどひそやかな震える希望を感じたか。

彼が、あの粉挽車をつかまされなかったら? 考えた心持が我胸に響く。

四月二十九日(土曜)ひどく暑。八十三度

『改造』の「文芸管見」林町へ午前中から行く電車の中でよむ。技巧、内容の問題――里見氏としては、自分のバイタルなことにふれて来たわけだ。いろいろ考える。そして、彼方で独りゆっくり、ベートウベンの、第五シムフォニーをきいた。又、ストリング、クォルテット、その他。これで一つ或思いが来、イタリー古代の、あの名は思い出せないが、白と黒との大理石を、実に驚くべき調和で使った建築を思い起し、なおその考は強まった。即、フィフスシムフォニーは、何で、自分を、あれ丈の感動、すんで吻っとし、そのままでは心が重く居たたまれないようにさせるのか? 音ではないか。