Japanische Klassiker mit Furigana
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こどうひゃくわ
胡堂百話
野村 胡堂
Lesen Sie 胡堂百話 (こどうひゃくわ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 124.386 Zeichen · 248 Bildschirme
流しちまってもいいんだが、安く入れてあるから、もったいない。キミ、出して来て使いたまえ」
そこで、私は、質札をたよりに、本郷の質屋を捜して行った。根津の通りから、ちょっと、はいったところだった。
請け出してみると、金側の……むろん、純金ではないが、立派な舶来品だった。質屋へは、大枚十九円也。それに一円二十銭の利息を加えて、二十円二十銭也を支払った。ピカピカ光るやつを帯にはさんで、社へもどって来ると号外が出た。野村が金時計を持ったという号外ではない。明治天皇のご病気か何かだった。
それから実に四十年。私は、この質請けの時計を愛用した。戦後になって、別の新しいのを買ったけれど、ネジをまけば、今でもこの時計は動いている。
そのころ、社主は、三木善八老だった。わが国新聞発達史の一ページを占めるこの老人は、そろばん一挺を座右から離さず、すべて数字から割り出して新聞を作った。社員が煙草の吸いさしを床に捨てると、じっと見ていて、人に拾わせ、原稿紙で鼻をかむと、容赦なく面責した。物を大事にせよ、というのが持論であった。
それから大分たって、私は一生に一度の大患いをした。