Japanische Klassiker mit Furigana
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こどうひゃくわ
胡堂百話
野村 胡堂
Lesen Sie 胡堂百話 (こどうひゃくわ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 124.386 Zeichen · 248 Bildschirme
もう一つは戦後である。熱川から逆に箱根までバスに乗った。
客は至って少なく、私は老妻を伴って、前の方の席にいた。最初のうちは何事もなく、登るにつれて見晴らしもよく、天気もまずは上々であったが、少しゆくと若い娘が乗って来た。
娘は、運転手と見知り越しらしい。あるいは、非番の車掌さんかも知れぬ。キップも買わずに運転手の横へペタリとすわった。
聞くともなしに聞いていると、どうも運転手君の方が、この娘を好きらしい。何かとご機嫌をとっているうちに、娘がとんでもないことをいい出した。
「お前さん、もっと勇気があるのかと思っていたら、案外臆病なのね。もっと、とばすわけにゆかないの?」
「なにお!」
と、運転手は腹の中で答えたようである。今まで慎重すぎるほど慎重だったのが、急に大変なことになった。私と老妻とは、座席にしがみついて、頭が天井にたたきつけられるのを、ひたすら防ぐほかはなかった。
普通は何時間とかの道を、たった三十分で元箱根へ着いた。私と老妻とは生命びろいした思いで下車したが、それから十日とたたぬうちに、十国峠で二回もバスの転覆があり、十何人かが死傷した。