Japanische Klassiker mit Furigana
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こどうひゃくわ
胡堂百話
野村 胡堂
Lesen Sie 胡堂百話 (こどうひゃくわ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 124.386 Zeichen · 248 Bildschirme
江戸ッ子の辰野博士にしてみれば、よっぽど不思議な話だったに違いないが、私は別に、はずかしいとも思わない。
私は、自分の一生を通じて、たった一つ、自慢できることがある。銭形平次を三百八十幾つ書いたことでもなく、長篇小説二十二本を作り上げたことでもない。新聞社に籍のあった三十三年間、アルミニュームの弁当箱を毎日持っていったことだ。これだけは、ささやかな私の自慢だと思っている。
「野村胡堂って、ケチな野郎だな」
「女房の手料理に、それほど敬意を表さなければならないのだろうか」
ありとあらゆる陰口が、ささやかれているのは、知っていた。今でも古い友達は、私の顔を見ると、無粋な弁当箱を、すぐに連想するかも知れない。
最初はもちろん、乏しい新聞記者の財政上の必要が、それをさせたのだ。だが、習慣がついてみると、街の食堂で売っているランチなどは、不潔で、不衛生で、そのわりに美味くもなく、こんなことをいっては、食堂業者にしかられるかも知れないが、皿を洗うかわりに犬になめさせるようなことが、かりにあったとしたところで、われわれには、分りはしないのだ。
そういう潔癖さと、一種の無精さが、ついに私を三十余年間の腰弁生活にさせた。