Japanische Klassiker mit Furigana
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こどうひゃくわ
胡堂百話
野村 胡堂
Lesen Sie 胡堂百話 (こどうひゃくわ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 124.386 Zeichen · 248 Bildschirme
その楽譜は、当時、日本へはいったばかりのもので、来合わせたレコード会社の人たちが、お世辞抜きで、キモをつぶした。東大では美学を専攻、登山なども好きだったが、卒業も見ないで病に取りつかれた。私が鎌倉の山の上の、遠く三浦三崎の灯台までも見えようという青嵐の中に引っ越したのは、一彦の健康が、一番大きな理由であった。
ちょうど銭形平次を書きはじめた頃で、雑誌が出るのを待ち構えて読んだ。
「お父さん。今月はうまいな」
「先月のは、トリックは、いいけど、余韻がないな」
銭形の最大の愛読者は、自分のせがれではなかったかと今でも思う。
一体、女房というものは、亭主の作品を読まないものだ。女房が熱心に読みはじめるのは、亭主の浮気を勘づいた時で、作品の中から、何か尻尾をつかもうとするためだというが、うちの家内は、その必要もなかったろうし、それに、現代モノと違って、捕物帳には尻尾も出せまい。
その点、一彦は、よく読んでくれた。自分の子供に読まれて困るものは書くな。というのが私の主張である。もちろん、娯楽読物であるから、修身の教科書みたいなわけには行かないが、銭形に対して、多少なりとも健康な読物という批評があるとすれば、それは、一彦という監視者があったせいかも知れない。