Japanische Klassiker mit Furigana
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こどうひゃくわ
胡堂百話
野村 胡堂
Lesen Sie 胡堂百話 (こどうひゃくわ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 124.386 Zeichen · 248 Bildschirme
極く上等の玉露かなんかを、ひとり、音もなく、たのしむのである。
「お茶というものは、大した功徳のあるものですよ。これを用いていれば、一生、大病もせず、長生きします」
栄西禅師の『喫茶養生記』にあるようなことを、芝居の老女のセリフみたいに、おちょぼ口で、訓戒してくれた。
しかし、こっちは、生意気ざかりの中学生である。「なにを言ってやがんだい」くらいに思っていたが、人間的な感化というのは恐ろしいものである。いつの間にやら味を覚えて、一生の間、お茶のとりこになってしまった。酒をのまず、煙草を廃し、紅茶もコーヒーもほしいとは思わぬが、お茶だけは一種の中毒状態で、六十年後の今日でも、お茶がないと、頭が、ぼーっとしてしまうのである。
戦争で、物が不自由なころ、軽井沢へ出かける前に、苦心して手に入れた上等のお茶を、カバンに詰めてチッキで送ったところ、どうしたわけか、これが着かない。駅で紛失してしまったのである。
私は、完全にぼんやりしてしまった。盗られたのが口惜しいのではない。一日でも、二日でもお茶が切れると、頭が真空みたいになって、原稿どころではないのである。