Japanische Klassiker mit Furigana
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こどうひゃくわ
胡堂百話
野村 胡堂
Lesen Sie 胡堂百話 (こどうひゃくわ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 124.386 Zeichen · 248 Bildschirme
音楽、美術、文学、芸能に、子供を無暗と駆り立てる近頃の親とは正反対だったのだ。
父は、私を医者にするつもりだった。どうして、あれほど執着したのか分らない。おそらく当時の農村では、お医者様ほど尊敬される職業はなかったからであろう。何が何でも医者になれと、頭ごなし至上命令なのである。
そのころ石川啄木は、海軍の軍人にあこがれて、兵学校を目ざしていた。彼が首尾よく腰に短剣をつっていたら、日本の歌壇は、どうなっていただろうか。もしも私が、もっと親孝行だったとしたら、銭形平次というものは……。
いや、医者に文筆家は、なかなか多く、本業よりもその方で有名になった実例は、十指にあまるほどあるから、やってみなければ分らないが――
とにかく、私は、医者だけはどうしてもいやだった。絵描きが駄目なら文学だが、文学で飯の食える自信はなかった。
母親はどんな顔をしていたろう……と、思い返してみるのだが、何も言われた記憶がない。半世紀前の女親は、純良な空気みたいな存在だったのだ。
「頼むから医科へ行け」
「文科ならゆきます」
両々、大いに頑張った末、たして二で割る現代の政治家ではないが、法科ということで妥協した。