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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

「サンデー毎日」1934(昭和9)年6月3日~10月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 125,597 字 · 253 页

青空文庫

「十四歳から道場へ来ておるのだから十三年目の免許皆伝だ。十三年もやれば、傴僂だって、皆伝になる」

「すると、奴、二十七歳か」

「そうだ」

「二十七歳で、遊蕩を知らんぞ、彼」

「こんど、おびき出すのだな。あいつの、酔ったところを、ぜひ見ておこう。それには、例の日がいいぞ」

同門の誰彼が、そんなことを、諜しあわせていた。

七月。

暑いさかり、例の夏の陣の表彰日だ。

門下生たちは、高台付きの白扇か、箱入蝋燭か、小菊紙十帖ほどな品物に、半年分の授業料として、金一歩(百疋)をつつんで上に「謝儀」と書き、うやうやしく、添えて出すのが、例なのである。

道場の方からは、茶菓、弁当がでる。

正面に、武神、流祖、ふた柱を祀って、神酒をあげる。式となって、昇格の免状だの、賞状などが渡され、師範からなお鞭撻の訓話があって、終わると、夕方は早めに散会という順序であった。

庄次郎は、皆伝免許の祝いとして、竹刀をもらった。竹刀の腹に、水引がかけてある。それを、右の肩にかつぎ、賞状と皆伝の巻物をつつんだ萌黄風呂敷を、左の手にかかえて、にこにこ、藩邸の門を出て来た。

待ちかまえているのが、