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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

「サンデー毎日」1934(昭和9)年6月3日~10月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 125,597 字 · 253 页

青空文庫

三

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今般左ノ者等発起人ト相成、海運橋兜町ニ於テ、第一国立銀行ヲ創立シ、博ク事ヲ行ワントス。資本金中二万株ハ既ニ三井組小野組ヨリ入社セリ、一万株即チ一百万円ハ諸君ニ応ジ分割スベシ、諸君冀クバ協力同心シテ共ニ洪益ヲ謀ランコトヲ

発起人  三井八郎右衛門

外四名

総監役     渋沢栄一

「ふーむ……」

露八は、いつまでも新聞に首を垂れたまま、横丁の泥濘をあるくときのような顔をしていた。

番台は、首をのばして、

「金持ちのやる仕事だから、金儲けにゃ極まっているが、一体、どんなことをやるのが銀行てえもんでしょうか」

「……書いてあるじゃねえか、ちゃんと、ここに」

「でも、分からないんで」

「よく読んでみねえ」

不機嫌に、新聞を突っ返しながら、露八が云った。

「――博ク事ヲ行ワントス、と立派に書いてあるじゃねえか。つまり、事ヲ行ワンとするんだ。こんなことが判らねえのか」

着物を引っかけて、外へ出ると、坊主頭へ濡れ手拭を畳んでのせた。昼遊びの太鼓が、トコトン、トコトンと半間な音をどこかの二階でさせている。露八は、舌うちをして、

「ここも馬関の稲荷町みてえになりやがった」