轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

「サンデー毎日」1934(昭和9)年6月3日~10月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 125,597 字 · 253 页

青空文庫

三

三

脚絆、ちり紙、旅合羽、道中薬、そんな物が買って来たばかりらしくならべてあった。お蔦は、つり銭を、財布へ入れながら、

「これくらいで、いいでしょう」

「いいとも。……櫛を持ってるかい」

「あるけれど」

「貸してくれ」

「あたしが、掻いてあげるから、坐んなさい。……まあ、はやく伸びないと、これじゃあ、おかしい」

「なあに、道中は、手拭いでチャンチキ冠りさ」

お蔦は、うしろから、顔をのばして、露八の顔にかさねた。

「……捨てないでね」

「てめえこそ」

突きとばして、突きとばされて、男女は、明るく笑いあっていた。

午ごろ、男女はもう、安宿を立っていた。旅合羽の露八と、手拭かぶりのお蔦と。

「おい、宮川町は、通るまいぜ」

「なぜ」

「榊原の泊まっている木屋町から、向う河岸じゃねえか。見つかッたら、こんどこそ、首がとぶ」

「大丈夫」

お蔦は、何か、思い出したように笑った。

「――この間は、茶屋の土蔵とかで、おまえさん、うまく命拾いをしたってね」

「誰が云った」

「榊原さんがさ」

「健吉が? ……ふうむ、そんなことを云ってたか」

「憎めない人間だって」

「じゃあ、俺の偽せ気狂いを、知ってたのかしら」