轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

「サンデー毎日」1934(昭和9)年6月3日~10月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 125,597 字 · 253 页

青空文庫

気がつくと、跳び上がって、

「あ熱ッ! ちちちち!」

雨と黒煙で、人影は、靄の夜の影法師ほどにしか見えない。ぬかるみには炎が映っている。民家も焼けていれば、上野三十六坊も文珠閣も炎を噴いているのだ。露八は、今日ほど死というものが何でもなく思えたことはないと自分では涼しく考えていたが、頭の上に火の粉が落ちても分からないほど、実は、心も肉体もどうかしてしまっているのであった。

「首を、引ッこめろ」

誰かに、呶鳴りつけられて、あわてて畳の塁へ屈みこむと、

ぴゅるっん――

羽二重をこするような空気の音が耳をかすった。途端に、積んである畳が半分、粉々になって、人間の脳味噌と一緒に、後ろの崖へ、どかあん! と炸裂した。

乾いた土砂が、顔へ噴きつけた。露八は、ぬかるみの中へ遠く抛り出されて、官軍の眼に曝されている自分を見いだしたが、ぺたんと坐ったまま、起つことを忘れていた。どっちのほうが味方なのか、敵なのか、咄嗟には、それすら判断できなかった。

「やられたかっ、露八」

榊原健吉に、襟がみをつかまれて、やっと起つと、

「しっかりしろっ」

「くそっ、大丈夫」

「大丈夫か」

いうまに、