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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

次々と着いてくる早馬は、武衛門の楊柳に、何頭となくつながれて、心ありげに、いななきぬいていた。

「丞相、お目をさまして下さい」

李儒は、顔色をかえて、董卓の寝殿の境をたたいていた。

宿直の番士が、

「お目ざめになりました。いざ」と、帳を開いて、彼の入室をゆるした。

艶めかしい美姫と愛くるしい女童が、董卓にかしずいて、玉盤に洗顔の温水をたたえて捧げていたが、秘書の李儒がはいって来たのを見ると、目礼して、遠い化粧部屋へ退がって行った。

「なんだな、早朝から」

董卓は、脂肪ぶとりの肥大な体を、相かわらず重そうに揺るがして、榻へよった。

「大事が勃発しました」

「また、宮中にか?」

「いや、こんどは遠国ですが」

「草賊の乱か」

「ちがいます――かつてなかった叛軍の大がかりな旗挙げが起りました」

「どこに」

「陳留を中心として」

「では、主謀者は曹操か袁紹のやつだろう」

「さようです。たちまちのうちに、十八ヵ国の諸国をたぶらかし、われ密詔を受けたりと偽称して、幕営二百余里にわたる大軍を編制しました」

「そいつは捨ておけん」

「もとよりのことです」

「で――まだ詳報はこないか」

「昨夜、夜半から今暁にかけて、ひんぴんたるその早馬です。