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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

吉川英治『三国志(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志、三国志。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 页

青空文庫

――すでに、敵は袁紹を総大将と仰ぎ、曹操を参謀とし、その第一手の先鋒を呉の孫堅がひきうけて、水関近くまで攻め上ってきた由にございます」

「孫堅。――ああ、長沙の太守だな。あれは戦は上手かな?」

「上手なはずです。なにしろ、兵法で有名な孫子の末孫ですから」

「孫子の末裔だと」

「はい、呉郡富春(浙江省・富陽市)の産で、孫、名は堅、字は文台と申し、南方ではなかなか名の売れている男です」

と、李儒は、かねて聞き及んでいる彼の人がらについて、こんな話をした。

それは、孫堅が十七歳の頃のことである。

孫堅は父に伴われて、銭塘地方へ旅行したことがある。当時、銭塘地方の港場は、海賊の横行が甚だしくて、その害をこうむる旅船や旅客は数知れないくらいだった。

ある夕べ、孫堅が父と共に、港を歩いていると、海岸で何十人という海賊どもが、海から荷揚げした財貨を山分けするので騒いでいた。

孫堅は、それを見かけると、わずか十七歳の少年のくせに、いきなり剣を抜いて、海賊の群れへ躍り入り、賊の頭目を真二つに斬って、

(我は、沿海の守護なり)

と叫んで、阿修羅のごとく、暴れまわった。

賊は驚いて、あらかた逃げてしまった。