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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

は逆になっていたといってもいいので『御布令』なども、殆んど形式以上の効力はなかった。

貧民救済のほうも同様である。

一年まえから、市中の数カ所に『お救い小屋』が設けられ、またしばしば施米や施粥が行われた。それは、そのとおりであるが、規定どおりに行われることはなかった。

施米のばあい、男に対して一日三合、老人や女子供が二合と定まっても、当人たちに渡されるときは三合が二合になり、二合がまた削られる。一区劃百人の窮民がいるとすれば、その条件に難癖をつけて、三分の一人の数をはねてしまう。今も昔も、役人たちのすることは似たようなものらしい。こういう事実を知っている窮民たちは、せっぱ詰ると暴徒になった。

大塩平八郎が乱を起こしたのも、これらの状態を座視するに忍びなくなったからで、その檄文の中には、

――四海困窮いたし候えば、天禄ながく絶えん。小人に国家を治めしむれば、災害ならび至る。

という書きだしで、

天皇が足利氏このかた、政治や賞罰の権を失われたため、下民に不平や恨みがあっても訴えるところがなく、その怨恨はただ天道にすがるよりほかにない。近年、天災饑饉の続くのは、これら下民の怨恨が天に通じ、天が為政者に戒告を与えたものである。