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はなもかたなも

花も刀も

山本 周五郎

「税のしるべ」大蔵財務協会、1955(昭和30)年1月~7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,364 字 · 178 页

青空文庫

四

「面倒ばかりかけて、済まない」と、幹太郎は低頭した。

平八は微笑しながら「よしてくれ、お互いさまだよ」と云った。

幹太郎は道場から少年を伴れて来、坂の下へいって駕籠を呼んで来るように命じた。それから平八を門の外まで送って駕籠が見えなくなるまで見送った。

その午後になってかやが来た。

幹太郎は係りへ届け、自分の住居へいれておいて、その日の稽古を済ませたのち、夕食をともにし、夜の更けるまで語りあった。

――父が死んだのに、帰りたくても帰れない、という事情を、かやはよく了解した。おそらく秋田平八から云い含められたのであろう、土地や家屋敷まで借財のために取られそうだ、ということは話さなかった。

「もし必要なら、残った山林のほうは売ってもいいだろう」と、幹太郎は云った。

「ええ、なんとか致します」

かやは俯向いて「母と相談してどうともするから、そんなことは心配しなくてもいい」と云い、弱よわしく微笑した。

四

かやは、二た晩だけ泊って帰った。

商用で来たという伴れは、同じ村にいる父の碁敵だそうで年は六十歳。江戸に五日滞在して、国へ帰る。かやもそのとき同行する約束であるが、そのまえに、秋田平八が江戸見物の案内をするということで、旅籠町の『山源』